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線維筋痛症に安易な薬物投与は禁物

線維筋痛症とは・・・
検査では異常が認められないのに、全身性の痛みを訴える患者さんに対して下される診断です。

1.線維筋痛症の診断基準
下記の2項目を満たすものを線維筋痛症と診断します。
  1. (1)下図の18か所の圧痛点のうちの少なくとも11か所に痛みがある。
    触診の際、指診により約4kgの荷重をかけ、痛みを感じたものを圧痛点 陽性とみなす。
  2. (2)少なくとも3カ月間、広範な痛みが続いている。
    広範な痛みとは、痛みが体の左側と右側, 腰より上と下,体軸骨格 (頸椎,胸部前方,胸椎,腰)にある場合とします。

なお、これに加えて、検査で異常がないことを確認するため、画像検査や血液生化学検査を行ない、リウマチ性炎症疾患や甲状腺機能低下症などを除外する必要があります。
2.治療の現状
 この病気は、線維筋痛症というものの、筋組織や線維組織に異常がなく、痛みがどのような病変から生じるのかは不明とされているため、診断はもっぱら症状のみによってなされ、治療も対症療法しかありません。
 対症療法として行なわれる薬物療法の治療成績は悪く、そのことは線維筋痛症が難病と言われる所以です。
3.薬物療法の効果
 薬物の効果を調べた研究では、ほとんどが3か月以内という短期間の効果についてであり、三環系抗うつ剤やリリカでわずかな効果が認められています。
 しかし、三環系抗うつ剤について6か月間の経過を観たものでは、最初にみられた効果は最後まで持続していません。
4.鎮痛剤・向精神薬
 鎮痛剤や向精神薬の投与は、効果がないことが多く、たとえ効果が認められても一時的です。
 また、長期使用により交感神経緊張が持続する状態になり、むしろ症状をさらに悪化させる要因となります。
 そのため、限定的な使用に留め、効果が認められない場合や副作用が生じた場合は、直ちに中止しなければなりません。

 長期投与を行なった場合には依存性が生じ、投与を中止すると禁断症状が起こるため、効果がなくなっても中止することが困難になることがあります。
5.心理的ストレスの関与
 心理的ストレスが関与している場合が多く、ストレスが減少すれば自然に痛みも軽減することがあります。
 心理的ストレスが継続し、症状が慢性化したり、頻繁に再発する場合は、認知行動療法などの心理療法が必要となります。
6.慢性疲労の関与
 慢性疲労が関与している場合は、十分な睡眠をとり、過労にならないような生活スタイルに変えていくことが必要です。
7.線維筋痛症と筋筋膜性疼痛症候群
 同じ筋組織から痛みが起こる筋筋膜性疼痛症候群では、筋組織に筋拘縮やトリガーポイントという病変を認め、痛みの発生源であるトリガーポイントを刺激して痛みなどの症状が再現されることで診断されます。
 治療も筋拘縮やトリガーポイントを改善させるためのトリガーポイント治療という特異的な治療法が効率的に症状を改善させます。
 線維筋痛症と筋筋膜性疼痛症候群の関連については、それぞれの疾患の専門家が行なう診断や治療に関する手法が異なるため、評価が一致することがありません。
  • 線維筋痛症の専門家の手法
    診断:本人の訴える症状と圧痛の確認から行なわれる。
    治療:薬物療法を中心に行なわれる。
  • 筋筋膜性疼痛症候群の専門家の手法
    診断:診察により疼痛を誘発したり、筋を触診して病変を確認することにより行なわれる。
    治療:筋に対する局所療法(トリガーポイント治療)を中心に行なわれる。
8.トリガーポイント治療
 筋筋膜性疼痛症候群の専門家の立場から観ると、線維筋痛症の診断基準を満たすものでも痛みの原因となるトリガーポイントが確認され、トリガーポイント治療により改善する例を多く経験します。
 また、線維筋痛症の診断基準を満たさないものに対しても線維筋痛症の診断が下されていることがあり、正しいトリガーポイント治療がなされないまま、効果のない薬物療法が漫然と続けられている例にたびたび遭遇します。
 そのような例の多くは、トリガーポイント治療で改善します。
 このような状況から、線維筋痛症は筋筋膜性疼痛症候群が慢性化して難治化したものではないかと考えられます。
9.脳の構造異常について
 最近、線維筋痛症では脳に構造異常が起きているという仮説が提唱されています。
しかし、これは筋筋膜性疼痛症候群でも起こっていると考えられ、末梢神経が過敏になることに引き続いて起こる現象で、末梢の治療により改善するものもあることが判っています。
いずれにせよ、脳の構造異常は診断法や治療法がないため、まずトリガーポイント治療による末梢の治療とともに、心理療法や生活指導などを行なうことが重要であると考えられます。
10.線維筋痛症と診断されたら
 線維筋痛症と診断された場合でも、安易に薬物療法を行なわず、まず、トリガーポイント治療を行なうことが大切です。
仮に薬物を使用する場合でも、トリガーポイント治療で症状が落ち着くまでの期間に限定して使用すべきです。
11.トリガーポイント治療の注意点
 また、トリガーポイント治療についても、誤ったトリガーポイント注射ではなく正しいトリガーポイント治療を受けることが必要です。
 誤ったトリガーポイント注射とは、健康保険で行なわれているトリガーポイント注射で、「圧痛点に局麻剤を注射する方法」と定義され、「患者さんが一番痛い部位を聞き、その部位に注射する」と解説されているものです。
 痛みの発生源であるトリガーポイントは、離れた場所に痛みを発生させるため、患者さんが運動痛や自発痛として自覚する場所にはトリガーポイントは存在せず、そこに注射しても十分な効果は得られません。



 正しいトリガーポイント治療を行なう場合、痛みを誘発する動作や姿勢から障害されている筋を診断し、その筋を触診して痛みを誘発する部位を探します。
 そしてその部位に鍼や注射を行ないますので、治療を受ける際は、どのような診察がなされるか、注射部位がどのようにして決定されるかを注意して見守ることが必要です。

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